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大阪地方裁判所 昭和60年(わ)1300号 判決

本店所在地

大阪市東区今橋三丁目三〇番地

商号

日商岩井衣料株式会社

代表者氏名

片木晴次

本籍

大阪府吹田市津雲台二丁目二〇番地の四八

住居

大阪府吹田市津雲台二丁目六番九号

無職

伊藤二郎

昭和八年五月二日生

本店所在地

大阪市天王寺区上本町七丁目三四番地

商号

田中商事株式会社

代表者氏名

田中楢佐武郎

本籍

大阪市東区玉造一丁目五五二番地

住居

大阪府豊中市寺内一丁目七番一〇-三〇一号

会社役員

水沼万左央

昭和八年四月三日生

右被告人四名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤村輝子出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人日商岩井衣料株式会社を罰金八〇〇〇万円に、被告人伊藤二郎を懲役二年六月に、被告人田中商事株式会社を罰金一二〇〇万円に、被告人水沼万左央を懲役八月にそれぞれ処する。

この裁判の確定した日から、被告人伊藤二郎に対し五年間、被告人水沼万左央に対し三年間それぞれその刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人日商岩井衣料株式会社は、大阪市東区今橋三丁目三〇番地に本店を置き、紳士、婦人、子供用衣料品の製造販売業を営むもの、被告人伊藤二郎は、同会社の代表取締役専務としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人伊藤二郎は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一  同会社の昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が一億四三一七万九二三〇円(別紙修正損益計算書(一)参照)で、これに対する法人税額が五九一六万八六〇〇円であるのにかかわらず、架空仕入れを計上するなどの行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五七年六月一一日、大阪市東区大手前之町一番地所在の所轄東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一〇三万四一四二円、これに対する法人税額が三〇万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税五八八六万五〇〇〇円を免れた

二  同会社の昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が一億七九九九万五三二四円(別紙修正損益計算書(二)参照)で、これに対する法人税額が七四六三万七九〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿した上、昭和五八年六月一六日前記東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五〇九万二八一九円、これに対する法人税額が一五二万七六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税七三一一万〇三〇〇円を免れた

三  同会社の昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が三億三四〇九万〇四一五円(別紙修正損益計算書(三)参照)で、これに対する法人税額が一億三九一二万円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五九年六月二八日前記東税務署において、同税務署艮に対し、右事業年度の所得金額が三七六〇万一二九一円、これに対する法人税額が一四六一万二八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税一億二四五〇万七二〇〇円を免れた

第二  被告人田中商事株式会社は、大阪市天王寺区上本町七丁目三四番地に本店を置き、衣料副資材等の製造販売業を営むもの、被告人水沼万左央は、同会社の常務取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人水沼万左央は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一  同会社の昭和五五年一二月一日から昭和五六年一一月三〇日までの事業年度において、その所得金額が七三〇五万三七二四円(別紙修正損益計算書(四)参照)で、これに対する法人税額が二七五七万七一〇〇円であるのにかかわらず、架空仕入れを計上するなどの行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五七年二月一日、大阪市天王寺区堂ケ芝二丁目一一番二五号所在の所轄天王寺税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一五六三万七七七六円、これに対する法人税額が三四六万二四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正行為ににより、法人税二四一一万四七〇〇円を免れた

二  同会社の昭和五六年一二月一日から昭和五七年一一月三〇日までの事業年度において、その所得金額が五三八四万四三一八円(別紙修正損益計算書(五)参照)で、これに対する法人税額が一九四七万九六〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五八年一月三一日前記天王寺税務署において、同税務署艮に対し、右事業年度の所得金額が二〇六八万一〇三四円、これに対する法人税額が五五五万一二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税一三九二万八四〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)-各証拠末尾の括弧内番号は、検察官請求証拠等関係カード記載の請求番号を示す-

判示第一の各事実につき

一  第一回公判調書中の被告人日商岩井衣料株式会社代表者片木晴次、被告人伊藤二郎の各供述部分

一  被告人伊藤二郎の大蔵事務官に対する質問てん末書一四通(260ないし271、273、274)

一  被告人伊藤二郎作成の供述書(272)

一  被告人伊藤二郎の検察官に対する供述調書七通(275ないし281)

一  被告人水沼万左央の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通(234ないし244)

一  被告人水沼万左央の検察官に対する供述調書二通(245、246)

一  須浪正夫の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(62、63)

一  塚田栄司の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(64、65、67、69、71)

一  川島四郎の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(72、73)

一  清水雅美の大蔵事務官に対する質問てん末書四通(74、76、78、80)

一  伊東健治の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(81、83、85ないし88)

一  松岡宏三の大蔵事務官に対する質問てん末書四通(89ないし92)

一  金本斉の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(93ないし97)

一  播井朝美の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(98、99)

一  川村二郎、奥田豊之介、佐々木達裕、遠藤克子、入江正、芦部正之の各大蔵事務官に対する質問てん末書(順次100、101、113、123、214、216)

一  寺田正太郎の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(102、104、106、107、109、110)及び検祭官に対する供述調書(111)

一  伊藤進の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(114、115、116)及び検察官に対する供述調書(117)

一  伊藤慧子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(118、119)

一  高津治夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(120)及び検察官に対する供述調書(121)

一  植村純次郎の大蔵事務官に対する質問てん末書(125)及び検察官に対する供述調書(126)

一  伊藤和子の大蔵事務官に対する質問てん末書(127)及び検察官に対する供述調書(128)

一  貴島英雄の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(192、196)

一  中武芳弘の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(200、202、204、206、208、210)及び検察官に対する供述調書(212)

一  伊藤健治、松岡宏三、増永惠、金本斉、塚田栄司各作成の供述書(順次39ないし43)

一  清水雅美作成の確認書五通(44、46、48、50、52)

一  塚田栄司、中武芳弘各作成の確認書(順次60、179)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二四通(10、11、13、15、17、19、20、22、24、26、28、31、32ないし36、38、139、141、148、158、167、169)

一  東税務署長作成の証明書(7)

一  登記官作成の法人登記薄謄本(8)

一  被告人日商岩井衣料株式会社作成の定款写(9)

判示第一の一の事実につき

一  東税務署長作成の法人税確定申告書謄本(1)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(4)

判示第一の二の事実につき

一  東税務署長作成の法人税確定申告書謄本(2)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(5)

判示第一の三の事実につき

一  東税務署長作成の法人税確定申告書謄本(3)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(6)

一  大蔵事務官作成の「現金預金有価証券等現在高検査てん末書」と題する書面(30)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(37)

一  高橋脩作成の確認書(61)

一  林新吾、迫間経造の各大蔵事務官に対する質問てん末書(順次122、124)

判示第一の二、三の各事実につき

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(29)

一  清水雅美作成の確認書三通(54、56、58)

判示第二の各事実につき

一  第一回公判調書中の被告人田中商事株式会社代表者田中楢佐武郎、被告人水沼万左央の各供述部分

一  被告人水沼万左央の大蔵事務官に対する質問てん末書一七通(283ないし299)及び検察官に対する供述調書二通(301、302)

一  被告人水沼万左央作成の上申書謄本(300)

一  被告人伊藤二郎の大蔵事務官に対する質問てん末書七通(247ないし251、253及び254)に対する供述調書四通(255ないし258)

一  被告人伊藤二郎作成の供述書(252)

一  田中楢佐武郎の大蔵事務官に対する質問てん末書(189)

一  貴島英雄の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(190、191、193、194、195、197)

一  中武芳弘の大蔵事務官に対する質問てん末書七通(198、199、201、203、205、207、209)及び検察官に対する供述調書(211)

一  入江正、芦部正之、伊藤進知、門川幸雄、佐伯保夫、八幡卓、八幡義人、奥川健行、奥川きみ子、小倉博、河合義人の各大蔵事務官に対する質問てん末書(順次213、215、217ないし223、232、233)

一  塚田栄司の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(66、68、70)

一  清水雅美の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(75、77、79)

一  伊東健治の大臓事務官に対する質問てん末書二通(82、84)

一  寺田正太郎の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(103、105、108)及び検察官に対する供述調書(112)

一  清水雅美作成の確認書八通(45、47、49、51、53、55、57、59)

一  中武芳弘、門川幸雄、佐伯保夫、伊藤進知、佐々木邦治、松矢耕典、二口勝之各作成の確認書(178、181ないし184、186、188)

一  貴島英雄の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(190、191)

一  貴島英雄、白井政孝、池永庄一各作成の供述書(順次180、185、187)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四三通(12、14、16、18、21、23、25、27、137、138、140、142ないし147、149ないし157、159ないし166、168、170ないし177)

一  天王寺税務署長作成の証明書(134)

一  登記官作成の法人登記薄謄本(135)

一  田中楢佐武郎作成の定款写(136)

判示第二の一の事実につき

一  天王寺税務署長作成の法人税確定申告書謄本(130)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(132)

一  佐々木邦治の大蔵事務官に対する質問てん末書(228)

判示第二の二の事実につき

一  天王寺税務署長作成の法人税確定申告書謄本(131)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(133)

一  豊島昭彦の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(224、225)

一  金沢賢蔵、山本繁、大森進の各大蔵事務官に対する質問てん末書(順次226、229、231)

一  松矢耕典の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(227、230)

(法令の適用)

被告人伊藤二郎の判示第一の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役二年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から五年間その刑の執行を猶予する。

被告人伊藤二郎の判示第一の各所為はいずれも被告人日商岩井衣料株式会社の業務に関してなされたものであるから、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、判示第一の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告人日商岩井衣料株式会社を罰金八〇〇〇万円に処することとする。

被告人水沼万左央の判示第二の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役八月に処し、情伏により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人水沼万左央の判示第二の各所為はいずれも田中商事株式会社の業務に関しなされたものであるから、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、判示第二の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告人田中商事株式会社を罰金一二〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 上原茂行)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和56年4月1日

至 昭和57年3月31日

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

自 昭和57年4月1日

至 昭和58年3月31日

〈省略〉

別紙(三) 修正損益計算書

自 昭和58年4月1日

至 昭和59年3月31日

〈省略〉

別紙(四) 修正損益計算書

自 昭和55年12月1日

至 昭和56年11月30日

〈省略〉

別紙(五) 修正損益計算書

自 昭和56年12月1日

至 昭和57年11月30日

〈省略〉

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